業界団体である日車協連が料金問題に関して、損保との団体交渉に挑む方針を打ち出しました。個人的に思うことが幾つかあります。

 先ず思うのは、やっと動きだしたのかです。会員の多くは零細企業です。個々で対応し難い問題に、組織として動いてもらいたいという声は、昔からありました。しかし損保と仲良くやりたいという志向が主流であり、料金問題はタブーとされていました。日車協連が組織として、料金相場の底上げを目指す方向で30年前から動いていたら、業界内でのポジションも違っていたはずです。

 そしてこれは批判覚悟で言いますが、本質的に料金問題は個々の問題です。周囲が幾らで請求しているのかは、ある意味どうでもよいことです。先ずは自分が幾ら欲しいのか。そして請求金額に、本当に根拠が必要なのかも再考すべきです。

 自動車鈑金塗装には保険制度が絡んでくるので分かり辛いですが、請求金額と顧客に与える満足感が一致していなければ、顧客が離れていきます。請求金額以上の満足感を顧客に与えた時から、顧客が支持してくれます。仕事は次から次にやってきます。暇になる方が難しい。顧客の満足感は、必ずしも製造原価と比例しません。

 この業界は、はっきり言えば過剰投資です。設備自慢している大半の事業所は、正常な減価償却ができていません。だから何十年も、設備更新せずに使い続けます。正常な償却ができているなら、焼却後には設備更新する、或いは異業種へ進出する、社員の給料の大幅アップをする等の施策が必要になります。お金を使わなければ、税金で持っていかれてしまうだけです。まともに償却できているのは1~2%くらいではないでしょうか。

 2023年春先に値上の通知を各取引先にFAXしました。すぐに某損保から電話が入り、先方の考えているレートとは差があると言われました。1万円請求すれば、1万円以上の満足感をお客様に提供している自信があります。そもそも当社には、高いと思う方は来ません。もう何年も隙間なく仕事が入り続けている状態で、なぜ安売りしなければいけないのでしょう。高い安いと損保に言われる理由などありません。